本書における有機体の概念は、厳格な専門分野で形成される内容規定ではなく、身近な所で感じられる樹木などの形態を用いて、生き物の様相を捉えるものであり、この構造と動態を、人間や創造事物に適用して、認識や創造を生みだすものに成ります。静態的な構成要素としては、根元があり、幹があり、枝葉が在りこれらの要素間にエネルギーが循環する動態で動静構造が描き出されます。
内部:根本、幹、枝葉、エネルギーの循環、
外部:外部要素と因果、エネルギーの吸収と提供、
例えば、樹木という立ち位置から見ると、太陽や風、雨、土、他の生物、という外部要素が確認され、内部と外部の要素の特定と関係性を掴み、基本的な規則性が認識され一つの原理が描き出される。その算式を下にして、どの要素の質量の変化や、要素間の関係変化、エネルギーの質量変化という着目点を抑えて、意図する欲望に対する操作が加えられ、予見と結果の検証により、実際が捉えられる。
このような基本的なフレームを背景に備えて、各種の変数や、その質量、関係性という概念の中身を様々な物事に適用して全体を掴むという方式を採用します。こうした全体観が、誰もが身近に感じられるような型式にも思われます。これを観念形成にも適用し、「文化」という概念の内部構成要素と、外部の要素と関係性を組み上げる事で、一つの有機的な概念が創り出され、持続的な循環性を備える永続的な生命感を宿した概念が作られる。人間が外界から何がしかの感覚を受け、或いは提供する中で、その感覚を観念という言葉等に置き換えて、頭脳的な整理を取って、知覚する作業を行う上では、主体側の構造と同様の構造で、外界の感覚を観念へ変換する事が、最も実感の高まる方式で在り、「有機体」という概念を鍵にして構成する事が適正に思えます。「外界→感覚→観念→主客の一致、欲望と認識と創造の適正調和」という算式で纏められます。
このような概念を基礎にして、動静、過程と結果、インプットと変換工程とアウトプット等の概念を用います。言わば、感覚を観念に置き換える基礎的仕組みとなり、生き物である人間を基礎にした外界との適正調和策という方法論と性格づけられます。時間や空間の大きな対象を把握するにも、この作法を適用して根本や幹や枝葉やエネルギーという全体構成に各種の事象を当て嵌めて全体観を作りだし規則性を捉え意図する欲望と制御の創造が生み出される。
現代の消費社会はこの有機性や循環性の概念が弱まり、善意ある創造や制御とは異なる発想や欲望、対象との分断的な創造性の進行が顕著であり、或いは使えなくなったらすぐに取り換える発想が高まり、断片的で無機質な感性が進行しており感受性や生命感の弱りに及んでいる。創造事物や概念形成にもこの事が反映され、全体の形成や循環の持続的な仕組みと離れた支離滅裂な論理や行為、創造が生み出され、犯罪の自覚のない慢性化とも言える事象も散見され人格の定まらない外部環境の影響が現れる。こうした点への改善や予防にも、有機性概念を持って良好な関係形成への根源概念を人間の支柱と固める事が有用に思います。